成宮くんの顔は見たこともないくらい赤く火照っていて、一瞬、お酒のせいかと頭を過ったが、一口もお酒を飲んでいないこと思い出す。


それでも、なんとなく「お酒飲んだ?」と聞いてしまう。


「え・・・?」


「顔、赤いから」


「飲んでないっすよ俺」


「でもっ「や、多分これ照れてる・・・」


話を遮り、成宮くんは赤く火照ったままの顔と潤った純粋な瞳でそんなことを言うから、動揺してしまう。


今の若者は、平気で素直に感情を伝えるのだろうか。


30代からしたらまだ若い認定の25歳の私でも絶対に言わないことをを平気で言う。


成宮くんはどんな環境で育ったのだろうか、とまで考えさせられる彼は一体。


いや、きっと相手が年上であれば、なんでも言えてしまうのだ。


「う、うっそ~どこに照れるとこあったのよ」


またやってしまった、拗らせあまのじゃくめ。


「自覚ないのかよ」


「え~?あっこれ食べる?ほら、とるよ」


「いや、レディーにそんなことさせられないよ」


「え、レディー?」


取り皿を片手にサラダに手をつけようとしたその時、急に私の視界がやけに暗くなる。


顔を見上げると、少々怖くて冷たい表情で立つ細野主任の姿。


「細野主任・・・?」


「盛り上がってるとこ悪いな、成宮、お前をお呼びだ」


細野主任の指さす方向には、若い女の子たちが集まっている席。


「え俺?」


忘れてしまっていたのだ。


成宮くんが、カッコいいという部類に所属できるほどのビジュアルだということを。


やはり、みんな考えることは一緒なのだと笑えてしまう。


みんな私と同じように成宮くんのビジュアルに惚れてしまうのだろう。


私は女の子たちの敵役にはなりたくないその一心で、先に成宮くんの傍から離れる。


変に気を遣いすぎたのではないかと不安に思ったのも束の間。


成宮くんはにこにこしながら女の子たちの元へと歩き出していた。