汐里ちゃんから離れてからも、結構歩いて、もう目の前にはアパート。



でも、細野主任は私からは離れない。



なにを考えているのか、眉間にしわを寄せながら隣を歩いている。



「主任、もういいですよ」



「だめ、なんかだめ」



「主任、どうしたんですか」



「いいから、送ってく」



「らしくないですよ、もう大丈夫ですから」



「何言ってんの、どう見たら大丈夫って思うの。悪いけど無視する」



「もう着いてますから!」




足を止め、細野主任は私から一瞬で離れる。



無意識で私の腰に、手を当ててしまったというように、驚いた顔をして。




「・・・・・悪かった」



そう謝って、目は合わないまま。



またもや沈黙になりかけたその時、「どうしたらいいのかわけわからなくて、ごめん怖かったよな」と言った。



だから私も答えるように、淡々と話す。



「正直、私が甘えてたんだと思います。今日ずっと。というか前から」



「そんな風には思えなかったけど」



「分からないように、甘えてました」



「そっか」



「でも、もう大人です。私。
ずっと前から。
でもでも言ってちゃダメなので、社員登用試験受ける前に、実家に帰って気持ち整えます。
今決めました。
有給とります。
自分自身変わらないとダメなので、親に叱ってもらいます。
もう決めました。
この気持ちには嘘がないって思ってます。
だから、独りでいいんです。
強がってないです。
これh・・・・」



「もういい」



「・・・!?」



涙は女の武器なんて言うから、あまり異性の前で泣きたくはないのだけれど、どうしてか涙が止まらないのだ。



武器にしたくはない、だけれど。



包み込むようにして抱きしめる細野主任に、つい身体を預けてしまう私がいた。