彼を初めてこの目で見たとき、かなり胸を打たれてしまったのを今でも覚えている。

コロナウイルスが世間で流行ってから、やや落ち着いたころだった。

マスクの制限もなくなり、皆がいつマスクを外そうか外さまいか曖昧なあの頃

彼はなんの躊躇いもなく、素顔を見せてくれた。

私にないものを持っていると一瞬で確信してしまった出来事となったのだから。

人間は意外にも、自分に持っていないスペックを持った人に惹かれる素質があるんだとか、ないのだとか。

だけど、私はわかっていた。

好きではない。

好きなはずがない。

だめ。

だめだよ私。

彼は、私とは正反対だしうまくいくはずがない。

それに大きな壁があることも重々承知である。

歳が離れている。

私はそもそも年下より年上派だったし。

ましてや、男性より女性が年上なんて稀すぎる。

頭の中ではそう思っているのに。



「神子谷さーーーん!!!!」


彼の無邪気で、素直な姿に

いつも私は

参ってしまうのだから。