わたしは目を見張った。


こんな人の言葉に、振り回される必要なんてどこにもないのに。



確かにズキン──、と胸が痛んだ。

耳を引っ張られるよりもはるかに痛い。言葉の刃は一度刺さると簡単には抜けない。わたしは上手く呼吸ができなくなっていた。



ピーンポーン……


おんぼろアパートの一室に、インターホンの音が響き渡った。

わたしとおばさんは互いに目を見合わせる。


「ふんっ。そこで大人しく待ってな」


おばさんはそう言って消えて行った。


この家に、用事がある人なんていたの……?

不思議に思って、おばさんの言い付けも守らずに忍び足で玄関に向かった。


わたしは大きく目を見開いた。


目に映った光景が、あまりにも信じられないものだったから。


「おば、さん? どうしたの、」



その場で崩れ落ちていたおばさんはブルブルと唇を震わせながらわたしを見上げた。