今日は入学式だったので、すぐに帰っていいということになった。


美世「 さっき話してた知り合いのカフェ、千鶴のこと雇ってくれるって。」




千鶴「 ほんと ?! 」




美世「 今から行く? 」



ということで私達は



美世の知り合いの店の「 星空 」




へ行くことになった。




千鶴「 わぁ … 」



行ってみると、『 星空 』 という名前の通り、星をテーマとしたカフェだった。




琥珀「 こんにちは〜、美世が言ってた子かな? 」



店の奥から若い女の人が出てきた。



美世「 この人は琥珀さん。私のお母さんの友達。 」


琥珀「 あらあら可愛らしい子じゃない〜! 」



千鶴「 ど、どうも… 」


綺麗な人…


琥珀「 もう可愛いし採用♡ 」


はやっ?!



もっと、こう、面接とかあるんじゃないの?



志望動機は?



とかっ!



いや嬉しいけど?!?!?!



琥珀「 今日からよろしくねぇ〜、千鶴ちゃんっ! 」



と言い、



琥珀さんはこちらへやってきた。


次の瞬間、


ふわっと、花が咲いたようないい香りが鼻腔に広がった。


琥珀さんが抱きついてきたのだ。



千鶴「 あばばばばばば 」



美人が抱きついてきてる


距離感どうなってるの??


普通に心臓持たないですぅううう (泣)




美世「 ちょっ、琥珀さんっ!千鶴がショートしてるから! 」




琥珀「 あらぁ〜初心で可愛い♡ 」





この方の可愛いの概念はどうなってるの?!




美世「 気をつけなさい。千鶴。この人こういう所あるから。 」



こういうところとは、どういうところでしょう



初対面の人に危機感も持たないで抱きつくところでしょうか



可愛くない人に可愛いと言ってしまうところでしょうか



いい匂いがするところでしょうか(?)




カランカランッ




ドアの開く音がした。




琥珀「 凪くんこんにちは〜 」




凪「 …うっす、 」



わぁ〜、



千鶴「 綺麗な人… 」


中性的な顔立ちで、繊細で白く、毛穴一つない肌。


髪は染めているのだろうか淡い、今にも溶けてしまいそうな水色だ。


琥珀さんに美世に凪?さんといい、




ここの顔面偏差値高すぎやしませんか?!



私はこんなところにいていいの?!


け、穢れない?!




凪「 あ? 」



やば、声に出てた…



凪さんは低くそう言い


怪訝そうに眉をひそめた。



千鶴「 ひぃいいいい、ごめんなさいごめんなさい、私のようなゴミが口を開いてしまってすみませんんん 」



まだ死にたくないぃっ(泣)



せめてっ



指一本



小指にしてくださいっ(泣)




凪「 いや別にそこまで言ってないけど 」



と、凪さんが首の後ろに手を当てて目線をそらして呆れたように言ってきた



まだ、生きてて良いのですね…(泣)



琥珀「 まぁまぁ、仲が良さそうだし、凪くんは千鶴ちゃんに仕事おしえてあげてっ♡ 」



凪「 はぁ、何で俺が、 」


めんどくせぇ、と呟く凪さん


あ、私今、迷惑をかけてしまっているのでしょうか


『 迷惑かけないでよ! 』



『 アンタほんと迷惑 』


『 アンタホントになんなの? 』




『『『『 迷惑なのよ 』』』』






前に、お母さんに言われた言葉を思い出す。




千鶴「 あ、あのっ、わ、私以前にもカフェでのバイト経験あるので、だ、大丈夫ですよ 」




だ、だめだっ、




どもってしまう。



声が震えて、



誰にも迷惑かけたくない。



嫌われたくない。



自分の居場所を失いたくない



凪「 別に迷惑とは思ってないから。早くして 」


気を…使わせてしまった。



だめだなぁ、私


凪「 …なにしてんの、置いていくよ。 」


見ると凪さんはもうすでに歩き始めていて少し進んだところにいた。


千鶴「 …はいっ 」 ニコッ




うまく、笑えているであろうか。




私が私を守るために身に着けた、




心の護身術。



笑っていれば、



悲しいときだって、


怒っているときだって、


悔しいときだって、


恥ずかしいときだって


ずっと


ずっと笑っていれば、


自分のほんとうの表情に気づかなくて済むから、


私は、笑う。


自分を守るために




私は仮面をかぶる



凪「 … 」



琥珀「 はぁ~い、今日はもう遅いしここまでで帰りなさい〜 」



時計を見ると、もう7時をまわっていた。


やば、



帰らないと、



千鶴「 すみません、では先にしつれいしまs… 」




琥珀「 あ~っ!千鶴ちゃん待って待って! 」


琥珀さんが引き止めてきた。


千鶴「 ?? 」


琥珀「 凪くん〜!!千鶴ちゃんの事、家まで送っていってあげて!女の子一人じゃ危ないでしょ! 」



こ、琥珀さん、



それは


ありがた迷惑というやつです…っ(泣)


凪「 …おら、早く行くぞ 」



グイッ、と


私の二の腕を掴む凪さん。



凪「 …っ、 」



その直後、何故か凪さんは目を見開き



顔を歪めた。



千鶴「 …あの、? 」



どうしたんだろう。



体調でも悪いのだろうか。


凪「 いや、なんでもない。行こう。 」


なんだったんだろう…


千鶴「 あ、家ここなのでここまでで大丈夫です… 」


と言い終わるか終わらないかの時に


蒼「 姉さんッッ!! 」


後ろから凪くんと私を引き剥がすように蒼が抱きついてきた。


陸「 ね、ねねねね姉ちゃん、かかかかか、彼氏???? 」



陸がありえないほど震えている。


千鶴「 落ち着いて、陸 」



薫「 姉さんに彼氏は早いよ。姉さんには僕たちがいるでしょう? 」



何をいっとるんや???




彼氏??




私に?



一生できないよ()



翠「 千鶴ちゃんは僕と結婚するの! 」



かわいい…



昔からずっと言ってくれてるなぁ



凪「 …姉弟は結婚できないんだよ? 」




可愛い可愛いうちの天使に





現実を見せないでくださいます????????





陸「 と、とりあえず、おい、男 」



陸がどもりながら言った。




凪「 …俺? 」




陸「 家、あがってけよ。飯でも食いながらお前が姉ちゃんにふさわしい男か確かめてやる 」




おい、陸



お前がご飯作るみたいな言い方してっけど





作るの私だぞ?????????





凪「 では、お言葉に甘えて 」





ちょ、、





千鶴「 凪サン??? 」





凪「 どうせ、家に帰っても飯は出てこないから 」





嗚呼、この人は私達と同じなのかもしれない。




千鶴「 まぁ、あがっていきな、 」




とはいえ、お客さん…




そんな豪華な食事作れるほどの材料あったっけな…