その後、シュタイナー夫妻とニコルを連れて屋敷に戻るとアドニス様が出迎えてくれた。

初めてアドニス様と顔合わせするニコルは緊張している様子だったが、すぐに2人は打ち解けた。
そして、ニコルがシュタイナー家の養子になることを快諾してくれたのだった。


 ニコルとシュタイナー夫妻は1週間続く、お祭り期間の間滞在していた。

皆でお祭りに参加したり、ソルトの町を観光したりと楽しい時を過ごした。

アデルとニコルは年齢が近いということもあり、すっかり仲良くなっていた。
今ではニコルが勉強をしている側でアデルが絵本を読むという光景も珍しくはなくなっていた。


そして、あっというまに1週間の時は過ぎ……シュタイナー夫妻とニコルとの別れの時がやってきた――


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「アドニス様、どうかお姉様をよろしくお願いします」

見送りに駅まで出てきたアドニス様にニコルが声をかける。

「勿論だよ、彼女は俺の大切な婚約者なのだから。それよりもニコル。祖父母のことをよろしく頼むよ」

「はい、勿論です」

アドニス様に頼まれ、ニコルはシュタイナー夫妻に視線を移す。

「ニコル、元気でね。シュタイナー様、ニコルをどうぞよろしくお願いいたします」

私は改めてシュタイナー夫妻にお願いした。

「勿論だとも。任せてくれ」

「もう、ニコルは私達の家族のようなものよ」

そこへ今度はアデルが話に入ってきた。

「おじいちゃん、おばあちゃん。元気でね」

「ああ、また会おう」

「アデル、元気でね」

3人は交互に抱き合うと、アデルがニコルを見上げる。

「ニコル。また会いに来てね?」

「うん、勿論また来るよ」

「それじゃ、あの約束も守ってね」

「う、うん。分かったよ」

ニコルは戸惑いながら返事をする。……一体、二人でどんな約束をしたのだろう。

そのとき、発車10分前を知らせる汽笛が駅に鳴り響いた。

「それじゃ、そろそろ行こうか?」

「そうね、行きましょう。ニコルも行くわよ」

シュタイナー氏の言葉に、夫人は頷くとニコルに声をかけた。

「はい、分かりました。お姉様、お元気で」

「ニコルも元気で」

私とニコルは固く抱き合って、別れを告げ……3人は汽車に乗って帰っていった。


「皆、行ったな」

汽車が見えなくなるまで見送ると、アドニス様がポツリと口にした。

「ええ、そうですね……今度会えるのは……」

「俺とフローネの結婚式のときかな?」

アドニス様が私の肩を抱き寄せてきた。

「え……ええっ!? け、結婚式ですか!?」

その言葉に耳まで顔が熱くなる。

「そうだよ、フローネ。俺との結婚……考えてもらえないか?」

じっと私を見つめるアドニス様。

「お兄ちゃんとお姉ちゃん……結婚するの?」

アデルが目をキラキラさせて尋ねてきた。

「そうだよ、アデル」

アドニス様がアデルの頭をそっと撫でる。

「結婚式、楽しみだな〜お姉ちゃんのドレス姿見てみたい」

「俺も早く、見てみたいよ」

「アデル、アドニス様……」

二人の話に私はますます顔が赤くなる。

「よし、それじゃ俺達も帰ろう?」

アドニス様はアデルを肩車をすると、笑顔を向けてきた。

「はい、アドニス様」

私は笑顔で返事をし……3人で駅を後にした――