「よくお眠りになられましたか?」

「あ……そうね」

「お嬢様、またあの夢をご覧に?」

「え?」

ドーナは困ったように眉を下げながらベッドサイドに座る私の前に片膝をつくと、そっと私の両手を握った。

「そのお顔と声を聞けばわかります……長年、わたくしもできうる限りの情報を集めているのですがお役に立てず申し訳ございません」

「ドーナはよくやってくれているわ」

思わずこぼれたのは心からの労い言葉だ。

ドーナはこの家のメイド長として家事全般を切り盛りするのは勿論のこと、本好きなドーナは博学で私の知らない知識や世界を沢山教えてくれる姉のような存在だ。

「リリーお嬢様に誠心誠意お仕えし、奥様の仇をとるのがこのドーナの使命だと思っております」

「その気持ちだけでも十分よ、無理しないでね。ドーナに何かあったら……」

「お嬢様を悲しませるようなことだけは致しませんのでご安心を」

「その言葉を聞けて安心したわ」

ドーナが私の言葉に目を細めて頷いた。

「ではそろそろお着替えに入りましょう。あっ……そうそうお嬢様」

「どうしたの?」

「ザッハルト様が着替えて朝食を食べたら執務室にいらっしゃるようにと」

「え? お父様が?」