「ラピスだってそう思うでしょ? そもそも結婚を持ち掛けたのはルーカス様なのよっ!」

「きゅうきゅうっ」

「ん? どうしたの?」

ラピスは何かを伝えようとしているのか、先程から私の左手のあたりをウロウロしている。そして私の左手に嵌められた指輪をひっかいた。

「指輪? ……あら?」

よく見れば交換した指輪の中央には小さな青い宝石がはめ込まれている。

「結婚指輪に宝石なんて珍しいわね、これは……サファイア?」

手のひらを室内のシャンデリアに翳してみれば、淡い透き通った碧い石が小さな輝きを放っている。

「これを伝えたかったのね。ありがとうラピス。とても綺麗ね……」

(まるであの男の子の瞳みたい……)

そしてふとある疑問が頭に浮かぶ。
結婚式では腹が立つことが多すぎて指輪など全然じっくり見る余裕がなかったが、ルーカスはどうして指輪にサファイアなんてはめ込んだのだろう。

(黒い石をはめ込まれるよりよっぽどいいけどね……)

「はぁあ……わからないことばっかりだわ」

その輝きをみながら、私はやっぱりため息をついてしまう。


「今日から妻……」

口に出せば、悪魔王子であるルーカスの妻になったのだとますます実感が沸いてきて、なんだか泣きそうになってくる。

私は涙を溢さないように目の奥にぐっと力を込めた。


──コンコンコンッ