私が勢いよく振りかぶった剣先はルーカスに届く前にルーカスの長剣によって弾き飛ばされ、私は地面に倒れ込んだ。

私が落とした剣はすぐにカイルが拾い上げ、
ルーカスがそれを見ながらふっと吐息を漏らした。

「驚いたな、さすがは熊と呼ばれるご令嬢だ」

私は地面に倒れ込んでいた身体を起こすとルーカスを睨み上げた。

ルーカスは顔色ひとつ変えずに私の首元に剣先を突きつけている。

「殺すなら殺せばいい、お父様が黙っていないわ」

「ほう、肝も据わっているな」

ルーカスはそう言うと、突きつけていた剣を仕舞い、私を見下ろした。

そしてすぐに口元に不敵な笑みを浮かべた。

「……ずっと探していた」

(え?)


「──俺の妻になれ」


「なにを……言ってるの?」

「十年前、お前の母は殺された。お前が長年、その犯人を追っていることも知っている」

(!!)

「なぜ貴方が……そのことを」

ルーカスは鼻を鳴らすと私の目の前にしゃがみ込んだ。

「俺を疑ってるんだろう? ならば俺の妻になり、気の済むまで探ってみろ。そして証拠を見つけたなら殺せばいい。それとも今すぐ俺に殺されたいか?」

私はぎゅっとメイド服の裾を握りしめた。

「母を殺した犯人と繋がってるかもしれない貴方と結婚するくらいなら舌を噛んで死んだ方がマシね!!」

「ふん、俺が本当に関与してると?」

「どういう意味?」

「それはお前自身が俺のそばで答えを見つけるんだな」

「……そんなことして、一体貴方に何のメリットがあるの?!」

ルーカスは形のいい唇から白い歯を見せた。