「お、お前の方がモテてるだろう…っ、あまり主君を揶揄うな」

「ルーカス様を揶揄ったことなど一度もございません。まぁ僕がモテているのは事実ですが」

「そこは否定しないんだな……」

主人と部下という関係ながら、これほどまでに二人のやりとりが近しく、くだけてできるのはルーカスにとってカインだけだ。カイルがルーカスの乳母の息子だったため、ずっと一緒に育ち、兄弟同然だとルーカスは思っている。

「僕は(まこと)のことしか申しませんので。ルーカス様は確かに強面で威圧的な雰囲気を纏ってらっしゃいますが、それは不器用なだけ。本当のルーカス様は悪魔どころか天使のように可愛らしいとさえ僕は思っているのです」

「て、天使?!」

「はい。僕には羽が生えた天使にしか見えたことはございませんっ」

力強く満足げに言い切ったカイルから目をそらすと、ルーカスは眉間に眉を寄せたまま、顔を真っ赤に染めている。

「どうかされました?」

「……な、なんと言えばよいのかわからないのだ……」

「ではもう少し。僕から見ればルーカス様はお美しく気高く聡明で、誰よりも強くそして一途に初恋の君をずっと思っておられる、我が国で最も純真で……」

「お、おいっ! もういいっ、よくわかった」

「敬愛なるルーカス様にご理解いただき感謝申し上げます」

カイルはルーカスに生真面目に一礼すると綺麗な二重の目をにこりと細めた。