驚いて悲鳴を上げてしまう。床に夏祭りの出店で見かけるヨーヨーが潰れ、水が広がっていた。ヨーヨーをぶつけられたのだ。

「命中〜!」

「ナイス〜!」

クラスの中心にいるグループがゲラゲラと下品に笑っている。その手にはまだ大量にヨーヨーがあった。またぶつけられてしまうかもしれないという気持ちから、私は背を向けて走り出す。誰もいないところへ行きたかった。

冷たく濡れた頰を、熱い涙が伝っていく。どうして毎日こんな風に嫌がらせをされなくてはならないのか。思い付くことは一つしかない。あの日から私の毎日は変わってしまった。

走って裏庭に辿り着く。学校の中で唯一落ち着ける場所だ。伸び放題の雑草が風で揺れる。私はそれをぼんやりと眺めていた。

「濡れてる。可哀想に。風邪引いちゃうからこれ羽織りなよ」

その声と共に頭にバサリと何かがかかった。学校指定のセーターだ。横を見れば、私を不幸のどん底に突き落とした張本人である男が微笑んでいる。