智樹が最後のデートに選んだのは、初デートで訪れた遊園地だった。智樹とただの友達だった頃にもよく来ていた場所だ。

「紬、足痛くない?疲れてない?」

チラチラとこちらの様子を窺いながら訊ねる智樹に、私は内心苛立ちを覚えつつも「大丈夫」とぶっきらぼうに答える。私って本当に性格悪いな。智樹には早く別の相手を見つけてもらいたい。

ジェットコースターやコーヒーカップなど様々なアトラクションを乗るうちに、時間はどんどん過ぎていく。そして閉園時間が近付いた頃、私と智也は観覧車に乗ることになった。

ゴンドラがゆっくりと上へと上がる。それをぼんやり見ていた私に智樹が「紬」と話しかけてきた。前に座る智樹はやけに緊張した様子だ。

「あのさ、僕やっぱり紬と別れたくない!嫌なところがあるなら直す。だから、僕の恋人でいてほしい」

必死に智樹は懇願する。こんな最低な私に縋り付くなんて、こんないい人はいないだろう。だけど、私はそんな智樹だから飽きてしまった。

「無理。もうあんたのことなんて、一ミリも好きじゃないの」