「でしょ?先輩の隣に並べるよう可愛くならなきゃ!」

私が笑顔でそう言うと、聖くんの顔から笑みが消える。何か悲しい出来事でもあったみたいに表情がなくなって、目から光が消えた。それに驚いて思わず彼の体を軽く揺さぶる。

「聖くん?大丈夫?」

「あっ、ああ……。ごめんね。少しぼんやりしちゃった」

聖くんはそう言った後、何かを思い出したかのように私をジッと見た。そして顔の前で手を合わせる。

「莉愛、今実はコンクールに出す絵のモチーフを探しているところなんだ。よかったらモチーフになってくれない?」

「えっ!?」

もうすぐ秋の絵のコンクールがある。私たち美術部の生徒は何かモチーフにしたものをキャンバスに描き、顧問の先生に提出しなければならない。

「大事なコンクールなのに、モチーフ、私でいいの?」

「うん。莉愛がいいなって思ったんだ。今日の夜、家に来てくれない?場所はわかるよね?」

聖くんの家には何度か美術部のみんなで遊びに行ったことがある。私は「わかった」と大きく頷いた。