男が顔を上げて私を見る。涙が頰を伝った。中学や高校の時は遠くから見られているだけで、触れられることは絶対になかった。だから恐怖が倍で心の中を満たしていく。

「俺の家に行こっか。ここから近いんだよ」

私は必死に首を横に振って抵抗するものの、男がポケットから出したガムテープで口を塞がれ、手首も縛られてしまう。私を拘束した後、男は私を軽々しく抱き上げた。

「んんッ!」

声にならない声を上げて、男の腕の中でもがく。でもどうすることもできないまま、連れ去られていく。

「響は軽いね。これから一緒に暮らすんだし、おいしいものいっぱい食べさせてあげるね」

男は幸せそうに笑い、私は恐怖で震えた。