「響(ひびき)、久しぶりだね。こんなに遠いところに住んでいたなんて、探すのに苦労したよ」

私の目の前にいるのは、黒いパーカーのフードを深く被った男だ。体が震えていく。あの男だ。私をずっとつけ回して、人生をめちゃくちゃにしようとした男。どうしてここにいるの?私の人生にまるで蛇みたいに絡み付いて、離れてくれない。

「〜ッ!」

逃げようともがくものの、男の力が強くて敵わない。どうしてタクシーで帰らなかったんだろう。タクシーで帰っていれば、今頃家に帰ってお風呂に入っていたかもしれないのに……。

「響、こんな胸元の開いた服で飲み会なんて行ってたんだね。同期だけとはいえ、男もいるっていうのに……」

男がニヤニヤと笑い、私の胸元に触れる。気持ち悪い。最悪だ。でも自身を守ろうとした手は男に掴まれ、壁に縫い付けられてしまう。

男は私の胸元に顔を近付けた。数秒後、柔らかな感触が伝わってくる。胸元にキスをされているんだとわかって、寒気が走った。嫌だ。やめて!

「響、どうしたの?こんなに震えて寒いの?そうだよね。こんな外でなんて寒いよね」