「何これ……」

目の前の光景に私は立ち尽くすしかできない。私はさっき部活を終え、学校から帰ったばかりだ。家に一歩入ったら、家具も何もかもなくなっていて、お父さんもお母さんも誰もいなかった。

「どういうこと?」

一部屋ずつ見て回ったけど、どの部屋にも何もない。誰もいないし、電話をしてみたけど繋がらない。不安だけが募っていく。その時だった。

「へぇ〜、写真で見るより別嬪さんやん」

この辺りじゃ聞き慣れない関西弁に振り返ると、黒いスーツにサングラスと怪しい格好の男の人を引き連れた髪を赤く染めた男の人が立っていた。男の人は土足で家の中に入り、私を品定めするようにジロジロと見る。

「うんうん。これは上玉やな。今年で十八歳ならいい値段で売れるやろ」

売れる?一体何の話だ?それにこの男の人は誰?疑問と恐怖が交差する。私は恐る恐る口を開いた。

「あなたはどなたですか?お父さんたちは?売れるってどういう意味ですか?」