3人は帰り支度を始めた。
シュンが伝票を取り会計を済ませる。
2時間のカラオケで4,500円の会計を
シュンとメロンが1,000円ずつ支払い
年長のレインが2,500円を負担した。
90年縛りのレインのカラオケは
レイン本人による89年のヒットソングの歌唱で終わった
バービーボーイズ
目を閉じておいでよ
シュンもメロンも突っ込まなかった
20代の二人には、いや、普通は、
89年か90年代かの識別は難しい
ハンケチ知らずのレインの手からは雨が降っていたが、
彼の心にも感傷の雨が降っていた
レインは89年を知っていた
1989年は平成に当てると元年であり
昭和64年でもあった
昭和64年1月7日をして昭和最後の日となったが、
バービーボーイズ
目を閉じておいでよ
その歌は昭和64年1月1日に
発売されていた
昭和に発売された最後のヒット曲
レインはこの事実を知っていて、
昭和を沁みていた
自身の定めた掟を自ら破った
確信的犯行に不良の悦を覚えた
昭和最後の元日で締めて、マイクを置いた
・・・
カラオケボックスから
レインとメロンは、家の方角が一緒だった
少々歩くが30分ほどの徒歩で帰宅できる
シュンは、別方向だから
お疲れ様でしたと告げ
一人で歩き出していた
課長代理レインと営業のメロンは
肩を並べて歩き出した
「歩くか、俺も歳だからな。
肉が落ちねぇ」
「腹、出てきましたか?」
「いやさ、戻んねえんだよ。
休肝日つくらないと」
「毎日ですか?」
「あゝ、そうだな」
「ちょっと控えないと
週一くらいは」
「わかってる。
メロンは?」
「私、お酒は好きですけど、
家では飲みませんから」
「全く?」
「ええ、
うーん、うそ
たまに、ホントどうしようもない時は」
「なんだよ、どうしようもない時って」
「私だっていろいろあります」
「そうだな、悪いな」
「なんですか、悪いって、こわ」
「いや、さ、不公平だよな。
お前みたいに優秀な奴が、正社員になれないなんてな」
「契約社員で入っちゃったから仕方ないです、更新更新で」
「お前はしっかり評価されてるよ」
「とりあえずチャンスはいただいたので、結果です」
「あゝ、そうだな」
「私、登り詰めてみたいんです」
「えっ、そこまで思ってるのか」
「はい、私は男に生まれたかった」
「そうか」
「はい、お淑やかになんて私にはできないんです。男だったら、もっと馬鹿やって、ふざけて、くだらないこと言ってゲラゲラ笑って」
「おいおい、男だっていろいろ」
「そうですね。でも、若いうちにできるだけ」
「険しいぞ」
「望むところです」
「変わるといいけどな」
「変わりません」
「えっ」
正面を向いていた二人。レインだけが右を向いた。
メロンは続ける
「変わるわけないじゃないですか。社会における男優位なんて。女の人の活躍の場が増えてきたのはいいことですけど。
差別ではなくて、元々の性質が違うんです。体力が違うし、体格も違う、群れに対する習性も違うし、生理がないし、出産もない。
言ってしまえば社会で女が闘うのって、100m走を男と同じスピードで走れ、って言ってるようなもので。基本的には無理なんです。元々の性質が違うんです」
「じゃあ、ん、どういうことだ」
「だから、女性に活躍の場をとか、社会進出とかって言うじゃないですか」
「まあ」
「あれ、やればやるほど苦しむのは、実は女で。走れ、戦えって強要されてるみたいなもので。あっ、私はいいんですけどね、私、闘いたいタイプなので。全員そうじゃないってことです」
「じゃあ、どうすればいいんだ」
「元々の女の役割を認めるんです」
「元々の?」
「女が家事をこなすんだったら、男の仕事と同等の評価を与えるんです。評価とはお金です。つまりですよ、女性の社会進出と言っているのは、男性と同等の報酬を受け取ることへの過程なわけです。」
「うん」
「過程は社会進出とか体の良い言葉を使いますけど、結局はその先の結果が欲しいわけです。同等の報酬です。つまり、仕事ではなくて、家事であったり、うーん、これ言いますか、生理に対するハンデ、出産の肉体的、精神的負担などを認めて評価するんです。だから、社会で戦えではなくて、元々の役割を見つめ直して、認める。そして、それに対する対価を約束していく。対価は、今のこの世の中ではかなりというか、絶対、です。そもそも、女性のその役割が認められていて、男性と同等の報酬が受けれていたら、女性の社会進出を!なんてことは言ってないんです。家事や育児、とりわけ生理、出産などは女の仕事ですが、報酬は出にくいんです。仕事と捉えられていないからです。だから、社会に打って出るという手段しかなかったんです。もちろんキャリアの女性もいますが、仕事をすると言う総合力では女は男に勝てません。さっきの理由です、不利が多いからです。女の役割への結果が足りていないだけなんです。まあ男の人も、普通は働くっていう選択肢しかないし。大変ですけど。まあ、社会で生きる価値、評価、報酬というのは、仕事だけではないってことです」
「お前、なんなんだ」
「全て、受け売りです」
「誰の?」
「チャリル先輩」
#レイン
#メロン
#シュン
シュンが伝票を取り会計を済ませる。
2時間のカラオケで4,500円の会計を
シュンとメロンが1,000円ずつ支払い
年長のレインが2,500円を負担した。
90年縛りのレインのカラオケは
レイン本人による89年のヒットソングの歌唱で終わった
バービーボーイズ
目を閉じておいでよ
シュンもメロンも突っ込まなかった
20代の二人には、いや、普通は、
89年か90年代かの識別は難しい
ハンケチ知らずのレインの手からは雨が降っていたが、
彼の心にも感傷の雨が降っていた
レインは89年を知っていた
1989年は平成に当てると元年であり
昭和64年でもあった
昭和64年1月7日をして昭和最後の日となったが、
バービーボーイズ
目を閉じておいでよ
その歌は昭和64年1月1日に
発売されていた
昭和に発売された最後のヒット曲
レインはこの事実を知っていて、
昭和を沁みていた
自身の定めた掟を自ら破った
確信的犯行に不良の悦を覚えた
昭和最後の元日で締めて、マイクを置いた
・・・
カラオケボックスから
レインとメロンは、家の方角が一緒だった
少々歩くが30分ほどの徒歩で帰宅できる
シュンは、別方向だから
お疲れ様でしたと告げ
一人で歩き出していた
課長代理レインと営業のメロンは
肩を並べて歩き出した
「歩くか、俺も歳だからな。
肉が落ちねぇ」
「腹、出てきましたか?」
「いやさ、戻んねえんだよ。
休肝日つくらないと」
「毎日ですか?」
「あゝ、そうだな」
「ちょっと控えないと
週一くらいは」
「わかってる。
メロンは?」
「私、お酒は好きですけど、
家では飲みませんから」
「全く?」
「ええ、
うーん、うそ
たまに、ホントどうしようもない時は」
「なんだよ、どうしようもない時って」
「私だっていろいろあります」
「そうだな、悪いな」
「なんですか、悪いって、こわ」
「いや、さ、不公平だよな。
お前みたいに優秀な奴が、正社員になれないなんてな」
「契約社員で入っちゃったから仕方ないです、更新更新で」
「お前はしっかり評価されてるよ」
「とりあえずチャンスはいただいたので、結果です」
「あゝ、そうだな」
「私、登り詰めてみたいんです」
「えっ、そこまで思ってるのか」
「はい、私は男に生まれたかった」
「そうか」
「はい、お淑やかになんて私にはできないんです。男だったら、もっと馬鹿やって、ふざけて、くだらないこと言ってゲラゲラ笑って」
「おいおい、男だっていろいろ」
「そうですね。でも、若いうちにできるだけ」
「険しいぞ」
「望むところです」
「変わるといいけどな」
「変わりません」
「えっ」
正面を向いていた二人。レインだけが右を向いた。
メロンは続ける
「変わるわけないじゃないですか。社会における男優位なんて。女の人の活躍の場が増えてきたのはいいことですけど。
差別ではなくて、元々の性質が違うんです。体力が違うし、体格も違う、群れに対する習性も違うし、生理がないし、出産もない。
言ってしまえば社会で女が闘うのって、100m走を男と同じスピードで走れ、って言ってるようなもので。基本的には無理なんです。元々の性質が違うんです」
「じゃあ、ん、どういうことだ」
「だから、女性に活躍の場をとか、社会進出とかって言うじゃないですか」
「まあ」
「あれ、やればやるほど苦しむのは、実は女で。走れ、戦えって強要されてるみたいなもので。あっ、私はいいんですけどね、私、闘いたいタイプなので。全員そうじゃないってことです」
「じゃあ、どうすればいいんだ」
「元々の女の役割を認めるんです」
「元々の?」
「女が家事をこなすんだったら、男の仕事と同等の評価を与えるんです。評価とはお金です。つまりですよ、女性の社会進出と言っているのは、男性と同等の報酬を受け取ることへの過程なわけです。」
「うん」
「過程は社会進出とか体の良い言葉を使いますけど、結局はその先の結果が欲しいわけです。同等の報酬です。つまり、仕事ではなくて、家事であったり、うーん、これ言いますか、生理に対するハンデ、出産の肉体的、精神的負担などを認めて評価するんです。だから、社会で戦えではなくて、元々の役割を見つめ直して、認める。そして、それに対する対価を約束していく。対価は、今のこの世の中ではかなりというか、絶対、です。そもそも、女性のその役割が認められていて、男性と同等の報酬が受けれていたら、女性の社会進出を!なんてことは言ってないんです。家事や育児、とりわけ生理、出産などは女の仕事ですが、報酬は出にくいんです。仕事と捉えられていないからです。だから、社会に打って出るという手段しかなかったんです。もちろんキャリアの女性もいますが、仕事をすると言う総合力では女は男に勝てません。さっきの理由です、不利が多いからです。女の役割への結果が足りていないだけなんです。まあ男の人も、普通は働くっていう選択肢しかないし。大変ですけど。まあ、社会で生きる価値、評価、報酬というのは、仕事だけではないってことです」
「お前、なんなんだ」
「全て、受け売りです」
「誰の?」
「チャリル先輩」
#レイン
#メロン
#シュン