◯企画開発部部署(夕方)
自分のデスクでぐったりとしながら、缶コーヒーを握りしめる杏璃。
杏璃(つっ…かれたぁ〜〜〜)
慣れない仕事に普段はしない他者との長時間のコミュニケーションが、思った以上に杏璃の負担になっていた。
デスクに肘をつき、片手でひたいを抑えながら深々と息を吐く。
午前中のガイダンスからはじまり、午後に社内見学。
総務や経理、営業、広報、販売促進部などの各部署をまわって戻ってきたところだった。
杏璃(自社とはいえ、全フロアまわるのなんて、それこそ入社以来かも…)
(にしても、こんなに疲れるとは…。アラサー怖っ)
思わぬところで年齢の壁を感じてショックを受ける。
そこへ後輩のひとりが近づいてきた。
後輩1「あ、あの、唐沢さん」
杏璃が顔を上げて後輩を見る。
後輩は頬を染めてコチコチに緊張しながらも話した。
後輩1「こ、今夜、みんなで久しぶりにご飯行こうって話になってるんですけど、唐沢さんもご一緒しませんか?」
杏璃「あー…」
杏璃は頬をかいて目を逸らした。
杏璃(飲み会ってあんま好きじゃないんだよなぁ)
(そもそもあの人たち(悠里・美雪)は来てほしくないでしょうに)
無表情ながら相手を傷つけないよう、優しい言葉遣いで返す杏璃。
杏璃「私はそういうの行かないから。誘ってくれてありがとう」
後輩1「あ、でも…」
後輩がちらっと後方を見た。
美雪が後輩を監視するようにこちらを睨んでいる。
悠里のほうは楽しそうに咲也に話しかけている。
咲也のほうも笑顔で応じており、すっかり場に馴染んでいた。
冷めた表情でふっと息をつく杏璃。
杏璃(そういうことかい)
後輩はもじもじしながら話し続けた。
後輩1「1週間しかいられないなら、早めに打ち解けられたほうがいいって梶さんたちが…」
「それなら唐沢さんもいたほうがいいですよねって」
自分たちが杏璃に直接誘いをかけるのはプライドが許さないが、若くて可愛い男の子と食事をする機会は逃したくないらしい。
杏璃(どうせ来やしないからとでも思ってるんでしょうね)
本当に杏璃が来てくれるのではないかと期待の眼差しを向けている後輩。
一方、杏璃が見ていることに気づいた悠里は、咲也の肩越しに勝ち誇ったような笑みを向けてきた。
無表情のまま杏璃のひたいにピキッと青筋が立った。
杏璃(へー。そーか。ふーん…)
後輩1「(様子をうかがうように杏璃を見上げ)唐沢さんが来てくだされば、天野くんも安心して参加できると思うので」
「あっ、も、ももももちろん唐沢さんの都合が良ければって話なんですけど!」
杏璃「(後輩を遮るように)いいわよ」
後輩1「えっ」
驚いた後輩に、営業用の笑顔を見せる杏璃。
とても美しいが、威圧的なオーラが隠せていない。
杏璃「せっかくだから参加させてもらうわ」
「指導役の私がいないと、天野くんも可哀想だし」
指導役の部分を強調すると、今まで咲也にべったり張りついていた悠里が頬を染めてキッと睨んできた。
だが杏璃と直接やり合う勇気はないのか、くるっと踵を返してどこかへ立ち去る。
美雪があわてたように追いかけていく。
今まで彼女たちと楽しげに喋っていた咲也は、きょとんとしていた。
自分のデスクでぐったりとしながら、缶コーヒーを握りしめる杏璃。
杏璃(つっ…かれたぁ〜〜〜)
慣れない仕事に普段はしない他者との長時間のコミュニケーションが、思った以上に杏璃の負担になっていた。
デスクに肘をつき、片手でひたいを抑えながら深々と息を吐く。
午前中のガイダンスからはじまり、午後に社内見学。
総務や経理、営業、広報、販売促進部などの各部署をまわって戻ってきたところだった。
杏璃(自社とはいえ、全フロアまわるのなんて、それこそ入社以来かも…)
(にしても、こんなに疲れるとは…。アラサー怖っ)
思わぬところで年齢の壁を感じてショックを受ける。
そこへ後輩のひとりが近づいてきた。
後輩1「あ、あの、唐沢さん」
杏璃が顔を上げて後輩を見る。
後輩は頬を染めてコチコチに緊張しながらも話した。
後輩1「こ、今夜、みんなで久しぶりにご飯行こうって話になってるんですけど、唐沢さんもご一緒しませんか?」
杏璃「あー…」
杏璃は頬をかいて目を逸らした。
杏璃(飲み会ってあんま好きじゃないんだよなぁ)
(そもそもあの人たち(悠里・美雪)は来てほしくないでしょうに)
無表情ながら相手を傷つけないよう、優しい言葉遣いで返す杏璃。
杏璃「私はそういうの行かないから。誘ってくれてありがとう」
後輩1「あ、でも…」
後輩がちらっと後方を見た。
美雪が後輩を監視するようにこちらを睨んでいる。
悠里のほうは楽しそうに咲也に話しかけている。
咲也のほうも笑顔で応じており、すっかり場に馴染んでいた。
冷めた表情でふっと息をつく杏璃。
杏璃(そういうことかい)
後輩はもじもじしながら話し続けた。
後輩1「1週間しかいられないなら、早めに打ち解けられたほうがいいって梶さんたちが…」
「それなら唐沢さんもいたほうがいいですよねって」
自分たちが杏璃に直接誘いをかけるのはプライドが許さないが、若くて可愛い男の子と食事をする機会は逃したくないらしい。
杏璃(どうせ来やしないからとでも思ってるんでしょうね)
本当に杏璃が来てくれるのではないかと期待の眼差しを向けている後輩。
一方、杏璃が見ていることに気づいた悠里は、咲也の肩越しに勝ち誇ったような笑みを向けてきた。
無表情のまま杏璃のひたいにピキッと青筋が立った。
杏璃(へー。そーか。ふーん…)
後輩1「(様子をうかがうように杏璃を見上げ)唐沢さんが来てくだされば、天野くんも安心して参加できると思うので」
「あっ、も、ももももちろん唐沢さんの都合が良ければって話なんですけど!」
杏璃「(後輩を遮るように)いいわよ」
後輩1「えっ」
驚いた後輩に、営業用の笑顔を見せる杏璃。
とても美しいが、威圧的なオーラが隠せていない。
杏璃「せっかくだから参加させてもらうわ」
「指導役の私がいないと、天野くんも可哀想だし」
指導役の部分を強調すると、今まで咲也にべったり張りついていた悠里が頬を染めてキッと睨んできた。
だが杏璃と直接やり合う勇気はないのか、くるっと踵を返してどこかへ立ち去る。
美雪があわてたように追いかけていく。
今まで彼女たちと楽しげに喋っていた咲也は、きょとんとしていた。