○ミーティングルーム
ミーティング用のテーブルを囲む3人の人間。
企画開発部部長と、企画課課長の近藤千秋が、入り口から入って左側に並んで座っている。
彼らの向かいには、若いスーツ姿の男性が腰掛けている。
杏璃(誰だろう、この人)
(来客ではないみたいだし)
見知らぬ客人を気にしつつ、上司に頭を下げる杏璃。
杏璃「遅くなりました。どのようなご用件でしょうか」
部長「ああ、唐沢くん。とりあえずきみも座りなさい」
杏璃に若い男性の隣の椅子を勧める部長。
杏璃「失礼します」
一声添えながら勧められた席に座る。
今まで正面の部長たちに向いていた男性の視線がこちらに向いた。
相手の顔を見た杏璃が息を呑む。
杏璃(うわ、可愛い…)
ふわふわしたやや明るめの髪と丸く見開かれた瞳が、トイプードルのように愛くるしい。
ニキビやそばかすが一切ない肌はツヤツヤで、その白さがいっそ眩しいほどだった。
ぶしつけに顔をじろじろと見てしまう杏璃に、不快な表情も見せずににこっと微笑む男性。
はっとして前を向く杏璃。
部長が軽く咳払いをした。
部長「(男性に向かって)彼女が今話をしていた、唐沢杏璃くんだ。まだ若いけど、企画開発部の期待の星だよ」
「(杏璃に向かって)唐沢くん、彼は天野咲也くん。来週からインターンとしてうちに来る」
部長からの紹介を受け、咲也は満面の笑顔とともに杏璃にお辞儀をした。
咲也「よろしくお願いします!」
杏璃「よ、よろしく…」
咲也の笑顔に若干気圧されつつ、杏璃も答えた。
杏璃(インターン…ってことはやっぱ大学生か)
(なんで私に紹介するんだろう)
いまいち状況が飲み込めていない杏璃だが、表情には変化がない。
千秋が杏璃に説明した。
千秋「インターンの間は各部署をまわるけど、メインはうちの課になるわ」
「だからひとり指導役をつけようと思って」
にこにこ笑う千秋に、杏璃は嫌な予感を覚える。
杏璃(まさか…)
杏璃「指導役…ですか」
千秋「そう。彼も知らない場所でずっとひとりは可哀想じゃない」
「誰かがサポートしてあげなきゃね」
テーブルの向こうからサムズアップをする千秋。
千秋「ってなわけで、頼んだぞ唐沢」
杏璃「は…?」
杏璃の口角がひくっと引きつる。
杏璃の反応を無視して話し合いを続ける千秋たち。
急いで抗議をはじめる杏璃。
杏璃「(半分立ち上がりかけて)ま、待ってください!」
「いきなり言われても困ります。私だって自分の仕事が立て込んでて…」
千秋「唐沢」
矢継ぎ早に話す杏璃を近藤が遮る。どこか凄みのある笑顔に閉口する杏璃。
千秋「これ、もう決定事項だから」
「部長と私からの命令。いいね?」
杏璃「…はい」
杏璃はしぶしぶ引き下がった。
隣の咲也が少し気まずそうな顔をしているのを見て、胸にチクッと罪悪感が突き刺さる。
杏璃(いや、あなたはなにも悪くないんだけど…)
再び目が合った千秋が、したり顔で微笑んでいる。
杏璃は相変わらずの無表情だが、心の中では頭を抱えて泣き叫んでいた。
杏璃(課長ぉ──っ!!)
ミーティング用のテーブルを囲む3人の人間。
企画開発部部長と、企画課課長の近藤千秋が、入り口から入って左側に並んで座っている。
彼らの向かいには、若いスーツ姿の男性が腰掛けている。
杏璃(誰だろう、この人)
(来客ではないみたいだし)
見知らぬ客人を気にしつつ、上司に頭を下げる杏璃。
杏璃「遅くなりました。どのようなご用件でしょうか」
部長「ああ、唐沢くん。とりあえずきみも座りなさい」
杏璃に若い男性の隣の椅子を勧める部長。
杏璃「失礼します」
一声添えながら勧められた席に座る。
今まで正面の部長たちに向いていた男性の視線がこちらに向いた。
相手の顔を見た杏璃が息を呑む。
杏璃(うわ、可愛い…)
ふわふわしたやや明るめの髪と丸く見開かれた瞳が、トイプードルのように愛くるしい。
ニキビやそばかすが一切ない肌はツヤツヤで、その白さがいっそ眩しいほどだった。
ぶしつけに顔をじろじろと見てしまう杏璃に、不快な表情も見せずににこっと微笑む男性。
はっとして前を向く杏璃。
部長が軽く咳払いをした。
部長「(男性に向かって)彼女が今話をしていた、唐沢杏璃くんだ。まだ若いけど、企画開発部の期待の星だよ」
「(杏璃に向かって)唐沢くん、彼は天野咲也くん。来週からインターンとしてうちに来る」
部長からの紹介を受け、咲也は満面の笑顔とともに杏璃にお辞儀をした。
咲也「よろしくお願いします!」
杏璃「よ、よろしく…」
咲也の笑顔に若干気圧されつつ、杏璃も答えた。
杏璃(インターン…ってことはやっぱ大学生か)
(なんで私に紹介するんだろう)
いまいち状況が飲み込めていない杏璃だが、表情には変化がない。
千秋が杏璃に説明した。
千秋「インターンの間は各部署をまわるけど、メインはうちの課になるわ」
「だからひとり指導役をつけようと思って」
にこにこ笑う千秋に、杏璃は嫌な予感を覚える。
杏璃(まさか…)
杏璃「指導役…ですか」
千秋「そう。彼も知らない場所でずっとひとりは可哀想じゃない」
「誰かがサポートしてあげなきゃね」
テーブルの向こうからサムズアップをする千秋。
千秋「ってなわけで、頼んだぞ唐沢」
杏璃「は…?」
杏璃の口角がひくっと引きつる。
杏璃の反応を無視して話し合いを続ける千秋たち。
急いで抗議をはじめる杏璃。
杏璃「(半分立ち上がりかけて)ま、待ってください!」
「いきなり言われても困ります。私だって自分の仕事が立て込んでて…」
千秋「唐沢」
矢継ぎ早に話す杏璃を近藤が遮る。どこか凄みのある笑顔に閉口する杏璃。
千秋「これ、もう決定事項だから」
「部長と私からの命令。いいね?」
杏璃「…はい」
杏璃はしぶしぶ引き下がった。
隣の咲也が少し気まずそうな顔をしているのを見て、胸にチクッと罪悪感が突き刺さる。
杏璃(いや、あなたはなにも悪くないんだけど…)
再び目が合った千秋が、したり顔で微笑んでいる。
杏璃は相変わらずの無表情だが、心の中では頭を抱えて泣き叫んでいた。
杏璃(課長ぉ──っ!!)