◯(回想)杏璃高校生時代
女子高生時代の杏璃の姿がふたつ並ぶ。
艷やかなロングヘアをなびかせ、目鼻立ちがはっきりした美少女(以下、杏璃・陽)。
前髪を長く伸ばし、うしろ髪を三つ編みにした猫背の野暮ったい少女(以下、杏璃・陰)。制服のきこなしもスカートが長く、かなり不格好。
杏璃・陽をクローズアップ。
過去に他人から言われた言葉がつきまとうように蘇る。
女子1「唐沢さんっていつもツンツンしてて、話しかけづらい」
女子2「杏璃ちゃんの隣には並びたくない!」
女子3「実は私たちをバカにしてるんでしょ」
杏璃(女は敵ばかりだった。いつも徒党を組んで人を攻撃する)
(人の彼氏を取ったとか、先生に色目を使ったとか、根も葉もない噂流して)
男1「賭けようぜ。誰があの唐沢杏璃を落とせるか」
男2「外見くらいしか取り柄がないくせに、生意気なんだよ!」
男3「いくら見た目がよくても、中身がなぁ…」
杏璃(男はもっと敵。私のことを人形みたいに扱って)
(告白を断れば逆ギレされて、暴力を振るわれたこともあった)
杏璃・陰をクローズアップ。
杏璃「いっそ地味にしてれば、もうちょっとうまく生きれるかとも思ったのよね」
「わざと顔隠して、うつむいて歩いてた。大好きだったオシャレもやめて、できるだけ目立たないようにって」
猫背で歩く杏璃・陰。
街中ですれ違う人がくすくす笑う。
杏璃「だけどそのとき」
生気のない杏璃・陰の瞳がなにかに気づいて上を向く。
ビルの巨大モニターに映し出される、派手な格好をした女性。
それを見た杏璃・陰の瞳に少し覇気が戻る。
杏璃「運命の出会いがあった」
美容系インフルエンサーがモニターから語る。
インフルエンサー『女性ってメイクひとつで気分が変わるんですよ。今日うまくアイライン引けたなって思ったら、いつもよりきれいになった感じがする。ちょっとアイブロウミスったなって思ったら、少しだけ落ち込んだりして』
『正直、そんなちょっとの差なんて他人にはわからないんですよね。でもそのちょっとの差が、その日の自分を左右する』
口を半開きにしてモニターを見上げる杏璃・陰。
頬が紅潮し、瞳がキラキラ輝く。
インフルエンサー『コスメは自分を変える武器になる。理想の自分になる後押しをしてくれる』
『つまりメイクは武装! 強くなりたい人はメイクを変えるのが1番!』
杏璃「人とは違う姿をしてるその人を、カッコいいって思った」
「目立つ姿をしてても堂々としてて、全然臆してなくて。他人の目を気にしてる自分が、急に情けなくなった」
(回想終了)
◯ランチタイムのカフェ・テラス席
真面目な面持ちでコーヒーのカップを持つ杏璃。
杏璃「それからは自分を偽るのもやめて、正々堂々と生きてきたってわけ」
「その結果がこれじゃ、あんまり進歩してないかもだけど」
咲也「(優しい表情)そういうところが…」(2度目の告白未遂)
コーヒーを飲みながらきょとんとする杏璃。
杏璃「え、なに?」
聞き返されてハッとする咲也。
顔がほんのり赤く染まる。
咲也「い、いや。やっぱり唐沢さんってカッコいいなって思って」
杏璃「あはは。確かにあのころ思い描いてた姿より、だいぶ勇ましくはなったよね」
腕時計を確認する杏璃。
杏璃「おっ、そろそろ昼休み終わる」
「悪いけど急いで食べてくれる?」
咲也「あっ、はい!」
フォークを手にし、急いでパスタを食べはじめる咲也。
その様子を和んだ表情で見つめる杏璃。
杏璃(可愛いなぁ…)
(にしても…やっぱり女装は気になるな)
ドキドキと鳴る心臓をごまかすように猛然と食べ続けている咲也。
咲也(俺またヘンなこと言いかけた…!)
女子高生時代の杏璃の姿がふたつ並ぶ。
艷やかなロングヘアをなびかせ、目鼻立ちがはっきりした美少女(以下、杏璃・陽)。
前髪を長く伸ばし、うしろ髪を三つ編みにした猫背の野暮ったい少女(以下、杏璃・陰)。制服のきこなしもスカートが長く、かなり不格好。
杏璃・陽をクローズアップ。
過去に他人から言われた言葉がつきまとうように蘇る。
女子1「唐沢さんっていつもツンツンしてて、話しかけづらい」
女子2「杏璃ちゃんの隣には並びたくない!」
女子3「実は私たちをバカにしてるんでしょ」
杏璃(女は敵ばかりだった。いつも徒党を組んで人を攻撃する)
(人の彼氏を取ったとか、先生に色目を使ったとか、根も葉もない噂流して)
男1「賭けようぜ。誰があの唐沢杏璃を落とせるか」
男2「外見くらいしか取り柄がないくせに、生意気なんだよ!」
男3「いくら見た目がよくても、中身がなぁ…」
杏璃(男はもっと敵。私のことを人形みたいに扱って)
(告白を断れば逆ギレされて、暴力を振るわれたこともあった)
杏璃・陰をクローズアップ。
杏璃「いっそ地味にしてれば、もうちょっとうまく生きれるかとも思ったのよね」
「わざと顔隠して、うつむいて歩いてた。大好きだったオシャレもやめて、できるだけ目立たないようにって」
猫背で歩く杏璃・陰。
街中ですれ違う人がくすくす笑う。
杏璃「だけどそのとき」
生気のない杏璃・陰の瞳がなにかに気づいて上を向く。
ビルの巨大モニターに映し出される、派手な格好をした女性。
それを見た杏璃・陰の瞳に少し覇気が戻る。
杏璃「運命の出会いがあった」
美容系インフルエンサーがモニターから語る。
インフルエンサー『女性ってメイクひとつで気分が変わるんですよ。今日うまくアイライン引けたなって思ったら、いつもよりきれいになった感じがする。ちょっとアイブロウミスったなって思ったら、少しだけ落ち込んだりして』
『正直、そんなちょっとの差なんて他人にはわからないんですよね。でもそのちょっとの差が、その日の自分を左右する』
口を半開きにしてモニターを見上げる杏璃・陰。
頬が紅潮し、瞳がキラキラ輝く。
インフルエンサー『コスメは自分を変える武器になる。理想の自分になる後押しをしてくれる』
『つまりメイクは武装! 強くなりたい人はメイクを変えるのが1番!』
杏璃「人とは違う姿をしてるその人を、カッコいいって思った」
「目立つ姿をしてても堂々としてて、全然臆してなくて。他人の目を気にしてる自分が、急に情けなくなった」
(回想終了)
◯ランチタイムのカフェ・テラス席
真面目な面持ちでコーヒーのカップを持つ杏璃。
杏璃「それからは自分を偽るのもやめて、正々堂々と生きてきたってわけ」
「その結果がこれじゃ、あんまり進歩してないかもだけど」
咲也「(優しい表情)そういうところが…」(2度目の告白未遂)
コーヒーを飲みながらきょとんとする杏璃。
杏璃「え、なに?」
聞き返されてハッとする咲也。
顔がほんのり赤く染まる。
咲也「い、いや。やっぱり唐沢さんってカッコいいなって思って」
杏璃「あはは。確かにあのころ思い描いてた姿より、だいぶ勇ましくはなったよね」
腕時計を確認する杏璃。
杏璃「おっ、そろそろ昼休み終わる」
「悪いけど急いで食べてくれる?」
咲也「あっ、はい!」
フォークを手にし、急いでパスタを食べはじめる咲也。
その様子を和んだ表情で見つめる杏璃。
杏璃(可愛いなぁ…)
(にしても…やっぱり女装は気になるな)
ドキドキと鳴る心臓をごまかすように猛然と食べ続けている咲也。
咲也(俺またヘンなこと言いかけた…!)