「……ううん。言えなかった」

「はあ⁉ なんだよ、それ。おまえが告りたいから、お祭りデート取りつけてくれって俺に頼んだんだろ?」

「もういいの。ちゃんと『結婚おめでとう』って言えたから。あ、ジュースで乾杯もしたんだよ。もちろん、わたしのおごりで」

「っだよ、それ」

「そしたらね、『千紘ちゃんのことも、隼人のことも、結婚してもずっと妹と弟として大切に思ってるから』って」

「は? 俺はちぃと同列かよ。まあ、それは別にいーけど……いいのかよ、ちぃは、『妹』で」

「いいよ。隼人と同じくらい、ヒロ兄がわたしのことを大事に思ってくれてたんだってわかったから」

「俺はっ……ちぃがヒロ兄に告りたいっていうから」

「わたしね、好きな人の幸せを祈ることにしたの。だから、もういいんだ」

 隼人の方を見て、ニコッと笑ってみせる。

 そんなわたしを見て、隼人がハッとした顔をする。

「そっか……まあ、その気持ちなら……わからないでもないけど」

「へぇ~。隼人にもいたんだ、そんな人」

「いるよ、俺にだって」

 ニヤニヤするわたしを見て、むすっとしながら隼人が返してくる。

「……俺さ、ヒロ兄のこと、正直ずっとウザいって思ってたんだよね。俺ばっか母さんに叱られまくって、アイツはいっつも気を遣われててさ。早くいなくなればいいのにって、ずーっと思ってた」

 隼人が、川の方をじっと見つめたまま、ぽつりぽつりとつぶやくように言う。