ちょっと複雑な家庭環境だから、普段のヒロ兄と隼人がどんな関係だったのかはよく知らない。

 けど、ヒロ兄はきっといいお兄ちゃんだったんだろうなって思う。

 お隣に住む一人っ子のわたしにとっても、『いいお兄ちゃん』で。

 両親の再婚を機に、ヒロ兄たちがお隣に引っ越してきたときは、わたしにもお兄ちゃんができたような気がしてうれしかったな。


 でも、いつだったっけ。

 そんなヒロ兄のことが好きだ……って気づいたのは。


 ヒロ兄みたいに優しくて頼りになる男の子は、同じ学校、同じクラスには全然いなくって。

 ヒロ兄は八歳も年上なんだから、当たり前といえば当たり前だったんだけどさ。


 でも、自分が子どもだっていう自覚もあったから、『もっとヒロ兄に近づけたら』『もっと大人になれたら』って思って、ずっと自分の気持ちは隠してきた。

 そうしたら、いつの間にかヒロ兄にはカワイイ彼女ができていて、わたしの入り込む隙間なんかなくなっていた。


 でも、このままヒロ兄が結婚しちゃったら、この気持ちをどこにもぶつけることができず、おかしくなってしまいそうだったから。

 せめて最後にちゃんと気持ちだけは伝えたいって思ったの。


 結果はわかりきってるから、ちゃんとフラれる覚悟はしてきたつもり。