「うわぁ、いいニオイ。あっ、うさきちのお面がある! かっわい~」

 必死にテンションを上げるわたしの隣で、ヒロ兄は静かに笑みを浮かべてる。


 やっぱり、ヒロ兄にとって、わたしはまだまだ子ども……なのかな。

 でも、せっかく最初で最後のチャンスをもらったんだから。

 ヒロ兄とのデートの約束を取り次いでくれた隼人には、大・大・大感謝だよ。


 ヒロ兄の弟……といっても、隼人はお母さんの、ヒロ兄はお父さんの連れ子同士だから、血は繋がってないんだって。


「すみません。そのうさきちのお面、ひとつください」

「えぇっ、ヒロ兄。ちょっ……」

「はい。千円ね」

 さっとお店の人にお金を渡してお面を受け取ったヒロ兄が、「はい。今日のお祭りの記念に」と言って、うさきちのお面をわたしの頭につけてくれた。

「あ、ありがとう」

 ヒロ兄の優しさに、ふふっと思わず笑みがこぼれる。


 ほんと、いっつもイジワルな隼人とは大違い。


 うさきちっていうのは、わたしの今一番お気に入りのウサギのゆるキャラ。

 隼人は、わたしが通学カバンにつけているうさきちのぬいキーを見て、「ちぃに似て、どんくさそうなキャラ」なんていってバカにしてきたんだから!

 ほんっと失礼なヤツ。