「…………火の玉のまま、すぐに落っこちちゃうかもしれないよ?」

「まあ、そんなこともあるだろうな」

「パチパチってきれいにはじけるかなーと思ったら、そのまま落ちちゃうかもだよ? それでも……いいの?」


 なに言ってんだろ、わたし。

 声が震えちゃう。


 わたしの問いかけに一瞬考えるような素振りを見せた隼人が、小さくため息を吐く。


「そんなの、いいに決まってんだろ。今まで何年待ったと思ってんだよ」

「うん。……じゃあ、やる」


 線香花火を一本受け取ると、隼人が自分のとわたしのに火を点けてくれた。


 わたしたちは、ずっと黙ったまま線香花火を見つめ続けた。


 いつまでも、いつまでも落ちませんように——と祈りながら。



(了)