「ムリして我慢すんな。落ち着くまで俺がいてやるから」


 もう……なんで今そんなこと言うの?

 緊張の糸が、プツリと音を立てて切れる。


「……う……うぅっ……失恋、しちゃったぁ……」


 次から次へと涙が溢れて止まらない。

 そういえば、ヒロ兄に彼女ができたって聞いて落ち込んでいじけてたときも、結婚が決まったって聞いて号泣してたときも、隼人はずっと黙ってわたしの隣にいてくれたっけ。

 わたしがどんなにイヤな態度を取っても、いっつも余裕の笑顔で受け止めてくれて。

 隼人は自分のことを子どもだって言うけど、わたしの方が全然子どもだよ。

 ヒロ兄と比べて、隼人なんか全然おこちゃまだってずっと思ってたのに……。


 ……あれっ。なに考えてんだろ、わたし。

 こんなの……隼人のことが好きみたいじゃん。


 え、ちょっと待ってよ。

 わたし、今失恋したばっかだよ?

 なのに、こんなの……。