廊下につけた時計は細い秒針が動く度、小刻みに揺れている。その不安定な揺れは、まるで今の私と同じだ。

咲人さんを諦めなきゃいけない、でも諦めたくない――そんな葛藤が、私の心を大きく揺らす。


(だけど……)


針は進む。
震えながらも、時を刻んでいる。

それなら私も。
立ち止まるのではなく進みたい。

前へ、咲人さんのいる未来へ――


「私、決めました」

「何を?」


急に立ち上がった私に、驚く飛鷹さん。既に二つ目のおにぎりを頬張っていたのか、横顔が大きくなっている。


「初心に帰ることを決めました。私は、咲人さんを好きでい続けます」

「でもそれ、アンタの嫌いな〝命令違反〟だろ?」


論破する飛鷹さん。
フルフル頭を横に振る私。