『ミミ、アイスが落ちるよ』
『え、本当だ!』
おねだりしたアイスを、珍しく咲人さんが買って来てくれた時のこと。
念願のアイスだからゆっくり食べていると、意外にも溶けるスピードが速くて。落ちる一歩手前で気づき、思わず舌でなめとった。
すると咲人さんは、目をぱちくりさせて。かと思えば、あどけない顔でクシャリと笑った。
『はは、本当にネコみたい』
『ッ!』
その笑顔に私はのぼせてしまい、アイスが溶ける速度が一段と速くなった。
「本当にネコになって、溶けるまで甘やかされたい」なんて。そんな事を思うほど。
(楽しい過去は、もう思い出せないと思っていたのに……)
思い出のカケラが見つかった。
咲人さんとの楽しかった日々を思い出せた。
こんなにくっきり、鮮明に――
(私……)
残り5分の「好き」の時間。
さっきから時計は進んで、残り2分。
(本当に、このまま終わっていいの?)