「……っ」


嫌われた。
ついに咲人さんに嫌われてしまった。

視界の下から上へ、波立つように視界が揺れる。せりあがった嗚咽は我慢できず、言葉の端々に現れた。


「うぅ。ごめん、なさぃ……っ」

「どういう謝罪?」

「何かダメな事をしたから、私を嫌いになったんですよね……っ?」

「……」


咲人さんは何も言わないまま、ドアノブへ手を伸ばす。私が立ち入れない外の世界へ、簡単に踏み出そうとしている。

あぁ咲人さんが行ってしまう。
私を置いて、どこか遠くへ――


「咲人さん、」

「……」

「咲人さん!」


必死に叫ぶと、咲人さんはピタリと足を止めた。かと思えば「これ戻しといて」と、ポケットに入れたハサミを取り出す。


「さっきの事だけど」

「さっき……?」