『で?どこから来た迷い猫かな?』
余裕そうな表情とか、たまに見せるニヒルな笑みとか。もう何をどうしたって、私の目には光って見えて。咲人さんの全てが別次元だった。
『そういえば私、一人暮らしなんですよ』
『ふぅん』
『だから、ほら。私を本当に家で飼えたりするんですが……どうですか?』
興味ありませんか?と。だんだん小さくなる声に、自分への自信のなさが現れている。悲しいかな、全てが平均的な私に、白馬の王子様をオトすほどの魅力はない。
『親は?』
『共に元気です。遠方の高校に通ってるから一人暮らしなだけです』
『ふぅん。じゃあ飼えないわ』
『え』
ガーン、と効果音が脳内に響く。と同時に「そりゃそうですよね」とヘラリと笑ってみせた。だって大人は、ウジウジしてる女なんて嫌いでしょ?大人って。自立してる女の人が、好きなんでしょ?
って思っていたのに。
『今飼ってる他のネコ追い出すまでは、飼えない。だから待ってて。あ、ネコだから〝待て〟はできない?』