「へぇ、気丈じゃん?今わりとヒドイこと言われたけど、泣かないわけ?」
「咲人さんと一緒に暮らし始めて一ヶ月。だいぶ耐性がついたんです。さすがに咲人さん本人から言われると凹みますが、赤の他人から言われる言葉に、わざわざ傷つきません」
「ひゅ〜。かっけー」
そう、私は泣かない。泣くもんか。だって、私はソレを嫌というほど知ってるから。
私の想いが咲人さんに届くことはないって、頭の片隅で覚悟してることだから。
だから「この恋は実らない」と赤の他人に言われたところで。今さら痛くもかゆくもない。それを承知の上で咲人さんと一緒に住み、ミミになってるんだもん。
(私は平気。大丈夫。大丈夫……)
空気がしんみりしたので、パチンと手を叩く。「さ、洗い流して出ますよ」とシャワーに手を伸ばした、
その時だった。
「なぁ。震えてっけど?」