「ん?何か言いました?」


飛鷹さんは首を横に振ったかと思えば、思い切り頭をのけぞった。それにより私の視界に突如として現れる、整った顔。血さえついてなければパーフェクト。


「なぁ、ミミちゃんさぁ」


景色が逆さまなのは気にならないらしい。そのままの状態で、飛鷹さんはのっぺりした口調で話す。


「アイツに心底惚れてるみてーだけどさ。アイツは落ちねーよ」

「アイツって、咲人さんですよね……?」

「そーそー。だから早いとこ俺に乗り換えな?他の男の慰め役にあてがわれたり、あからさまに興味ナイ態度とられたり。不憫すぎて見てらんねーわ。

もし俺に乗り換えてくれたら、体の底まで飽きるほど愛してやるよ?」

「……」


飽きるほど愛す、なんて。咲人さんから僅かな愛さえももらえない私からすると、喉から手が出るほど恋しいワードだ。