(もし咲人さんの髪を洗うことが出来たら、幸せだな)
この人みたいに「気持ちいい」って言ってくれるかな。それか、キスと同じで「へたくそ」って言うかも。
……いや、どっちでもいいや。
だって咲人さんと一緒にお風呂に入れる状況が、まず最高だもん。洗髪中、あのシックスパックを上からじっくり眺められるわけでしょ?
「なにそれ最高、両目でREC……!」
「ミミちゃん、意識トンでんぞー」
「……ん"ん」
シャワーの温度を少し下げ、頭もとい手を冷やす。
いけない。
自由人を前に、当人よりも頭が自由になってた。
なにか目の覚める話題を……、あ。
「そういえば、まだ名前を聞いてなかったですね」
「あぁ、言ってなかったっけ。
飛鷹(ひだか)周(あまね)。
成人してるけど、まだまだ若いっしょ?ってわけで。ここにいないヤローの事を思い出すより、ちっとはこのイケメンを拝んだら?」
「ははは」
「必要ないです」と突っぱねると、飛鷹さんは拘束具ごと両手を挙げる。次に「はぁ」と。降参ポーズの後に、わざとらしいため息をついた。