顔だけ振り返った咲人さんに、日光が降り注ぐ。
まるで映画のワンシーンだ。シチュエーションも、ビジュアルも、セリフも、何もかもが完璧すぎる。
「咲人、さん……」
「うん」
「これは、夢ですか?」
「……」
私の元まで戻ってきてくれた咲人さんの手に、そっと触れる。さっきの冷たさはなくなっていて、温かい。
(咲人さんって、こんなに温かかった?
こんなに、優しい顔をする人だった?)
目じりにジワジワたまった涙を、咲人さんが指でぬぐってくれる。やっぱり温かな温度に、今度こそ涙が流れた。
「俺は、ミミが好き」
「え……?」
「ミミを失いたくないし、誰にも渡さない。
誰であっても近づけさせないと約束する。
だから――
これからは一番近くで守らせて。
俺のミミを、俺だけが守りたい」