(落ち込んでる?悲しんでる?うぅ、何を考えてるのか分からない……)
寄り添っていいのか、それとも離れた方がいいのか――考えても分からなかったので、中間を選ぶ。
控えめに咲人さんの手を握ると、驚くほど冷たかった。〝冷静になった〟と捉えていいのだろうか。
「僕を捕まえたいなら、まずボディガードの周を殺さないとね。でも、その周と対等にやれるのは咲人しかいない。
咲人を殺せば周は生き続け、俺の命は守られ続ける。言ってる意味が分かるかな、小野寺くん」
小野寺(おのでら)と呼ばれたのは、指揮官。名指しされると更に顔を顰め、雪光さんを睨む。もちろん、簡単に怯む雪光さんではない。
「僕を追い詰めたいなら慎重に行動しないとね、っていうアドバイスだよ」
「裏にはびこっていながら偉そうな口を叩くな、極悪人」
「……」
小野寺さんの言葉に反応し、口角を下げ、顎を引く雪光さん。
気怠そうな表情を露わにし、一気に雰囲気が変わった。のばしていた背中を曲げ、腕を組み、飛鷹さんの腕によりかかる。
「立場を弁えてないな。僕の電話一本で、今すぐ日本から星井グループを撤退させることも出来るんだよ?」
「!」
実際にスマホを手にした雪光さんに、小野寺さんが唇を噛む。痛い所を突かれた、という表情だ。