咲人さんは、いわゆる裏社会にいる人で。しかもどうやら、その界隈で名をはせているらしい。そして言わずもがな、怒ると怖い。

昼夜逆転の生活ならまだしも、朝も昼も夜も、スーツで外出したり、さっきみたいな白シャツと黒パンツで外出したり。時間にとらわれず、様々な出勤の仕方をしている。

私がこの事実を知ったのは、出会ってすぐ。驚くことに、咲人さん自ら、同居前にそういう事情を話してくれた。


『――ってわけだから。じゃあね』

『分かりました!決してお仕事の邪魔はしません!それならいいですよね?では、お家にお邪魔しますッ』

『……は?』


思えば、あの時の咲人さんの笑顔。ちょー怖かった。

だって口元は笑ってるのに、目なんてマジだよ。マジ。その表情を見て、確かに一般人じゃないなって納得したもん。


「でも、それがまた〝良かった〟り……」


あの時は「こわい」と思ったけど、それ以上に……。好きな人のあんな顔を見せられて、ゾクゾクしちゃった。私はどうしようもない、咲人さん中毒だ。