そんな光景に笑みを浮かべたのは、なんと紫吹。撃たれた手を部下に手当してもらっている間、面白そうに私たちを眺める。
「右腕が肩入れするの分かるぞ、その女は面白い。攫った際は売ることなく、俺の傍に置いてやろう」
「け、結構です……っ」
「この俺に噛みつくか。その一途、どこまで続くか楽しみだ。
また会おう、ミミ」
部下を侍らせ、去って行く紫吹。その大きな体が見えなくなった途端――咲人さんと飛鷹さんの緊張の糸が、フッと切れる。
「はぁ……。紫吹は仕留めそこなうし、ミミは来ちゃうし」
「でも咲人さんは無事です!」
「あのねぇ……」
パチン。私の両頬に、いきなり衝撃が加わる。痛くて悲鳴を上げると――いつの間にか、咲人さんに抱きしめられていた。
「急に現れたミミに、どれだけ肝を冷やしたと思ってるの。しかも紫吹に気に入られるなんて……。俺の寿命、何年縮ませれば気が済むわけ」
「な、長生きしてくれないと困りますっ」
「そうじゃなくて……。平和な世界で生きてほしいだけなのに、なんで逆効果になっちゃうかな」
俺の心配事が増えるじゃん、と。いつもより崩した口調で、私の肩におでこを置く咲人さん。これは、かなり弱っている。