「咲人さん!私、ちゃんと聞きましたから!」
「ミミ、今それどころじゃ、」
「聞きましたからね!」
「チッ。飛鷹……」
おどろおどろしい声の咲人さんに、「なんで俺だよ!」と抗議する飛鷹さん。その木霊と入れ違いで聞こえてきたのは、パトカーのサイレン音。
「サツか、残念だがここまでだな。リズの宝とその嬢ちゃんは、必ず俺が取り返すから覚えておけ」
「紫吹……」
互いに〝警察に見られてはいけない獲物〟を仕舞う。その間、咲人さんの顔に浮かぶのは嫌悪感。
「諦めの悪い男だな。お前のじゃないと言っただろ。この子は……」
「ッ!ッ!」
「……」
この子は俺のだ――名言再び!と期待に胸を膨らます私を見て、咲人さんは口を噤んだ。
そんな咲人さんを見て「アイラブユーが言えない男の、どこがいいわけ?」と飛鷹さんが呟く。もちろん悪口禁止なので、急いで蓋をした。