「……へ?」


すぐ後ろで聞こえた声に耳を疑う。
さっきのは幻聴?――いや、違う。

だって全身で〝今〟を感じるから。

咲人さんの熱のこもった腕、私を掴む力強い指、独占欲を隠そうとしない毅然とした態度。そして、あの力強い声。


『ミミは、俺のだ』


(夢じゃない……っ)


ドクンドクンと胸が高鳴る。
この恋が、次に進む音がする。

人生の最高潮が、好きな人により最速で上書きされる。片思いの私からすると、こんなに嬉しいことはない。

紫吹に向かって構える飛鷹さんも、「ヒュー」と高い口笛を吹く。


「ミミちゃん、おめっとー。
後でクラッカー鳴らしてやるよ」

「でも私、既に頭が騒がしくて……っ」

「は?」


まるで「恋の開幕」を告げるみたいに、頭の中でファンファーレが鳴り止まない。

時期尚早?
両思い、は早とちり?
……この際、どっちでもいい。

例えさっきの発言が「その場限りのウソ」だったとしても、私が耳にした以上、スルーは出来ない。

あれは、まさに鴨が葱を背負ってきたんだ!