「だが紫吹の恐ろしさに耐えかね、再び脱走。リズ組の〝宝〟を持って、ウチに逃げ帰った」

「〝宝〟か。それを大人しく差し出す気はないみたいだな」

「大人しく奪われるつもりもない。いま俺を殺せば、リズ組の情報が外に漏れるよう手を打ってある」

「なるほど――見返りはなんだ」


その話がウソなのかホントなのか、真実は分からない。だけど紫吹は食いついた。


「聞きたいことがある。その情報をくれればいい。

女を攫う理由はなんだ?最近はコッチの敷地でも〝お手付き〟してるみたいだが、そんなに女が欲しいのか?」

「金に困っている女を店に出し、売る。組の資金源になるし、女の懐も潤う。双方利益しかない、極上のビジネスだ」

(確かに、私もお金に困っていた女だ!)


仕送りのお金とカレンダーを、何度も見比べた日を思い出す。道端で財布の中身を見て、肩を落とした日も。


(でもソレが原因で狙われたの⁉単純すぎない!?

っていうか、全国に何人の金欠学生がいると思ってるの!物価高騰の絶賛不景気を舐めるな!)