「~っ!」


悔しい、悔しい。腹立つ相手は雪光さん、紫吹、リズ組。だけど一番腹が立つのは、無力な自分自身。

今まで散々に守られておいて、知らない間に生き長らえさせてもらって。そのお礼も、恩返しも出来ないなんて。


(そんな情けない私を、咲人さんは好きでいてくれる?……ううん。私でさえ好きになれない私を、咲人さんが好きになるはずない)


グッと。体の前で揃えた両こぶしに力が入る。力をこめすぎて白くなった手とは反対に、今までないくらい心は赤く灯った。



「私、行きます。
咲人さんの所へ連れて行ってください」

「君も死ぬかもしれないよ?」

「それでも構いません」


咲人さんと過ごした夜を思い出す。キスをして抱きしめ合って、長いあいだ二人で話をした。

もしこの世から咲人さんがいなくなり、未来永劫、あの夜が訪れないのなら――私の心は、二度と灯らない。