「今日から君は、ビトラ組のホテルに住む予定だ。紫吹が消え、リズ組が解散した後、きちんとアパートに返すつもり。でも君は今、ホテルとは逆方向に向かっている――

ここに僕がいる意味わかる?」

「……私に咲人さんを救わせるためですか?」


すると雪光さんは、くすりと笑った。小ばかにした笑みだ。もちろんいい気はしないから、雪光さんを見る目が自ずと鋭くなる。


「逆に聞くけど、本当に咲人が好きなの?〝裏も裏〟の人間だよ?真っ黒だ。君が太陽なら、咲人は月。それくら正反対に位置する男だよ」

「いくら裏でも、私と正反対でも。そんなの関係なく、私は咲人さんが好きです」

「……」


言い切ると、途端に車内は静かになった。心臓が握りつぶされる緊迫感に襲われる。きっと私は今、雪光さんに品定めをされているんだ。


(飛鷹さんに恋バナする時のラフな感じが、まるでしない。こんなに重たい空気、初めて)


飛鷹さんも同じ気持ちなのか、時々ミラー越しに私の様子を伺っている。あの飛鷹さんが、こんなに静かになるなんて……それくらい雪光さんは恐ろしい人なんだ。