「!」車の気配を悟った瞬間。

飛鷹さんは私をおぶったまま、太ももまでズボンまくってしゃがむ。素早くホルスターに手をかけ、車に狙いを定めた……のだけど。

装甲が堅そうな、ピカピカの車を見た瞬間。手にしていた物を、ゆっくり元の場所へおさめる。どうやら敵ではないらしい。


「飛鷹さん?」

「……」


黙った彼に代わって口を開いたのは、車の後部座席の窓を開けて、こちらを見る人物――銀色の髪は一つ括りにされていて、スッキリした顔立ち。二十代くらいの男性だ。


「太ももではなく足首に携帯しなさいと、いつも言ってるだろう?〝太ももにホルスター〟なんて浪漫を抱くのは君くらいだよ、周」


あまね?と首を傾げると、飛鷹さんが「ボス……」と遠慮気味に返事をした。


(忘れてたけど、飛鷹さんの下の名前は周だった。っていうか飛鷹さん、今〝ボス〟って言った?)


混乱する私を、背中から降ろす飛鷹さん。その際こっそり「安心しろ、あの人は敵じゃない」と耳打ちした。また「アンタにとっちゃ味方でもないが」とも。

その言葉を聞いて、この人がビトラ組のボス・雪光さんであると確信する。咲人さんに無茶な命令を出した、張本人だ。