「――そして男はネコを手放し、一人で過酷な旅に出たのでした。おわり。

昔話、どうだった?
って、聞くまでもねーか」

「……~っ」



飛鷹さんの昔話もとい咲人さんの本音を聞いた私は……言う間でもなく、号泣だった。


「私、何も知らなくて……っ」

「そりゃそーだろ。言ってねーもん」

「でも咲人さんの命に関わる事なんだから、一言くらい!」

「まだミミちゃんは子供だから分かんねぇだろーけど、大人って変なところで意地を張るのよ。子供みてぇに何でも直球にはいかねぇんだわ。それに俺だって……いや、何でもねぇ」

(飛鷹さん……)


私を背中におぶったまま、尚も飛鷹さんは走っている。

昔話の途中、飛鷹さんは何回か、言葉に詰まった。もちろん息切れとかじゃなく。

極めて淡々と話そうと努める飛鷹さんの口調こそに、彼の秘めた感情を知った。

あぁ、そうか。
飛鷹さんもツライのだ、と。