「……っ」


バクバクする心臓は、今すぐ口から飛び出しそう。私をおんぶしてる飛鷹さんにも、この音は聞こえているはず。

だけど飛鷹さんは「すげー音」ってバカにしなかった。むしろ「私が話を聞く覚悟できた」と判断する材料になったらしい。


「アンタに言うのは卑怯かもしんねーけどさ、俺あの人に腹が立ってんだ。〝よろしく〟なんて言葉を最後にチョイスしたのが運の尽きだぜ。

アンタも聞きたいと思ってるみてぇだし。
悪ぃけど、最後に巻き添えになって」

「――……はい」


「さんきゅ」と言って振り向いた、飛鷹さんの慈愛に満ちた眼差し。それだけで、これから聞く話が「私の世界がひっくり返る話」だと想像がつく。

そして飛鷹さんは走るスピードはそのままに。
ついに、昔話を始めた。


「むかしむかし、男がネコを拾いました。

だけど男には〝とある使命〟があり、ネコを飼える期間は決まっていました――」



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