いきなり私の後ろから、長い足が伸びた。その足は的確に男を捉え、男を遠くの地面へフッ飛ばす。


「ぐ、は……!!」

「おー、よく飛ぶじゃねぇか。たーまや〜」

「?、??」


唖然として声も出ない状況の中。
私を追い抜く、長い足の持ち主。


「ネコがちんたら歩いてくれたおかげで間に合わねぇかと思ったわ。なーんで、まだこんな所にいんの。もしかしてミミちゃん鈍足系?」

「――ガッ⁉」


サスペンダーに支えられたダボダボのズボンは、地面に転がる男の腹へ容赦なく落ちた。その頬には、一直線に傷が伸びている。


(あのダボダボのズボン、知ってる。
あの頬の傷も、もちろん知ってる)


ある時は、気持ちがないのに私に迫ったり。
ある時は、ゴキブリから私を守ってくれたり。

頬の傷は、まさに、その時できたもの。



『ネコお得意のひっかき、ってヤツ?いやー、キツイの一発食らっちったぜ』



ニヤニヤ笑いながら、そんな事を言った。
この世で一番、破天荒な人物――


「おーっす、ミミちゃん〜。
半日ぶり、元気ぃ?」

「飛鷹さん……」