「――へ?」
一瞬のことだった。私のすぐ後ろを歩く人は、私の口を塞ぎ路地裏に連れ込む。
路地裏への入り口にさしかかったタイミングを狙って話し掛けられたんだと、遅れて気づく。
「んん!」
「そう暴れるなって。こっちは一か月もの間、ずーっとアンタを探してたんだ。やっと大鳳から離れてくれて一安心だ。アイツがいると厄介だからな」
ニタリと笑うのは、金髪の男の人。もちろん見たことない顔。
(そんな人が、どうして私を……⁉)
男がくわえている物に目がいく。あれは、タバコ。さっき大量に落ちていたタバコと同じ銘柄だと、色を見て分かった。
ということは――
(もしかしてこの人、ずっとマンションの外にいて、この機会を狙っていたの?)