白いワンピースに着替えて飛び出した私の荷物は制服、ただ一つのみ。本当はパジャマとか色々あったけど、それらは〝一緒に暮らすことになって咲人さんが買ってくれた物〟だから……。

見ると悲しくなりそうな物は、全て置いてきた。きっと数日もしない内に、咲人さんに捨てられるはず。


「……っ」


キュウ、っと。胸がしめつけられた。胸の前で抱えていた制服を、思わず握り締める。何かに縋っていないと歩くことは愚か、立つことさえままならない。


「咲人、さん……っ」


たまらなくなって、口をついて出た言葉は――愛しい人の名前。言葉にした瞬間、今まで抑えていた感情が雪崩のように押し寄せる。


「会いたい、会いたいです。今すぐギュッとしたい……っ」


咲人さんの代わりにならない制服を、シワがつくまで握り締める。

その時だった。


「咲人、咲人。大鳳咲人……へぇ。

やっぱアンタが、大鳳咲人が匿ってるオンナか」