「ミミの〝監視役〟は失敗。
つまり、俺の命令に逆らった」

「え、でも飛鷹さんは死なないって、」

「飛鷹は死なないと言ったけど〝裏切り者じゃない〟とは言ってない。当然、ミミの監視役も継続中って事」

「そんな……!」


昨日のことを思い出す。

私が眠る直前、疑問に思う音があった。それは玄関ドアの開閉音。あの時は幸せと睡魔で脳が溶けていたから、深く気にしなかった。


(あれが、もし飛鷹さんが出て行った音なら……っ)


でも、あの飛鷹さんの事だ。「ちょっと買い物に行ってるだけ」って、ひょっこり帰ってくる可能性もある。

だけど……咲人さんの時計を盗み見ると、ゆうに五時間は経っている。〝ちょっと買い物〟に出た、どころの時間じゃない。


(となれば、飛鷹さんは本当に……っ)

「――ミミ」


やっと理解が追い付く。
そんな私に、咲人さんがトドメの一言を浴びせた。


「次はミミの番だよ。

荷物をまとめて、今すぐココから出て行って」



―――
――




――プルル。



「飛鷹か?今ミミが出て行った。これから俺が言うことは分かるな?一つだけ頼まれてほしい。
……そう怒るな。説教くらう時間はないんだ。

それに、最後だ。お前が嫌いな〝この言葉〟も聞き納めだから、二つ返事で頷けよ。

じゃあ、ミミをよろしく――」