「――それでね咲人さん。あの時の咲人さんは本当にカッコよくて。冗談抜きで、白馬の王子様かと思ったんです」

「そんなこと思ってたの?」

「ふふ」


長く長く、夜の闇が深くなるまで、二人で話をした。とりとめのない話だった。だけど咲人さんは楽しそうに聞いてくれ、寝ぼけつつある私にも笑顔を向けてくれた。

――ちゃぷん。

こんなに尽くしてくれる咲人さんが初めてで、また好きになった。性懲りもなく、底なし沼にハマる音がする。


(あぁ、このまま沈みたい)


だけど、これから私が沈むのは夢の中らしい。ウトウトまどろむ瞼が、時おり視界を狭めている。