「ミミ、そろそろ水を、」

「やだ、離れないで。咲人さん……っ」


私が泣きすぎるから、咲人さんは何度も「水を飲んで」と言った。水分補給して、と。

だけど結局、私は一度も飲まなかった。「それなら」と、咲人さんはキスを止め、強制的に「私の寝かしつけ」に取りかかる。


「うぅ、ひどい……。寝るまでキスするって、言ったじゃないですか」

「そうだけどね。それだとミミは、何日も寝ないでしょ?」

「う……っ」


バレバレの思考。キスし続けていれば咲人さんと離れなくていい、なんて。邪な考えはスグに暴かれる。


「ミミが弱っていくとこなんて見たくないし。ましてや俺とのキスが原因なんて、ね」

「やっぱり無謀でしたか。……ワガママ言って、ごめんなさい」

「うん、いいよ」

(あ、また許してくれた……)


咲人さんは今日、一度も私を拒絶しなかった。
私が願ったことを、全て叶えてくれた。

ハグして、キスして、一緒に寝て。幸せすぎる一日だった。絶え間なく笑っていた。そんな私を見て、珍しく咲人さんも笑ってくれた。

……イレギュラーが重なると、嫌でも実感する。

やっぱり今日は「特別な日」なんだと。今日を境に、咲人さんとの甘い時間は一生やってこないのだと――